気管支喘息は呼吸器疾患のなかで最も罹患患者数の多い疾患であり,吸入ステロイドの普及とともに喘息コントロールは劇的に改善しましたが,現行の吸入ステロイドによる治療法は,あくまでも喘息症状のコントロール(対症療法)に過ぎず,気管支喘息の根本的治癒は目指せません。そのため,長期間に及ぶ喘息管理薬の使用継続が避けられません。そこで,気管支喘息に対する新たな根治療法(特定の吸入抗原に対する免疫寛容誘導)開発のための手法を確立したいと考えています。
Bronchial asthma is a most popular respiratory diseases, and the control of the disease is nowadays very developed well according to the cognition of the Inhaled corticosteroid (ICS) therapy. However, this strategy is only for suppress of the airway symptoms but not for the fundamental pathological mechanism. We are to establish a novel radical therapy (control the immune tolerance to selective antigens).
我々はマウス骨髄より骨髄様樹状細胞を作成し,種々のアレルゲン刺激下に培養し,naive mouseへと再移入する喘息モデルマウス実験系を確立しています。この喘息マウスモデルを使用し,これまでに感染症がアレルギー疾患発症に及ぼす影響に関して,様々な報告をしてきました。我々のこれまでの実験結果では,様々な病原微生物を骨髄様樹状細胞のダニアレルゲンによる刺激培養の際に共培養したところ,共培養(感染)する病原微生物によって,作成した骨髄様樹状細胞を移入したマウスに対し,ダニアレルゲン投与に対する炎症反応が増強したり,減弱したりする現象がみられ,その詳細なメカニズムに関する報告を行ってきました。一例として,或る種の真菌は宿主に感染する際に宿主の自然免疫担当細胞に働きかけ,自然免疫応答を修飾し,宿主からの免疫応答を回避していることが判明しました。そこでこのような病原微生物の宿主免疫の回避法,つまり免疫寛容の誘導を気管支喘息における特定のアレルゲンに対する免疫寛容誘導法として応用することを着想し,現在研究を行っています。
本研究により,これまで長期にわたって薬物療法の継続が必要であったアトピー性気管支喘息の根治が目指せるようになることが期待できます。