砂礫底がアサリ生息場形成に果たす役割について,従来の「物理的安定化」に関する役割以外の新たな観点から評価し,その潜在効果を引き出すための科学的知見を構築することを目的に研究を進めています。例えば,アサリの貝殻色と底質色の一致による被食率低減の効果を評価するため,野外調査と室内実験を実施しました。野外調査では,暗色系の砂泥底と明色系の砂底との間で,採取された稚貝の貝殻色に有意差が存在し,底質色と同系色の貝殻をもつ稚貝が多い傾向にあることがわかりました。また,クサフグを捕食者として用いた室内実験の結果,貝殻色・底質色の一致によりアサリ稚貝の被食率が低下することがわかりました。以上のことから,貝殻・底質色の一致がアサリ稚貝にとって視覚依存捕食者からの被食リスクの低減に与ることが示唆されました。このような結果は,砂礫底がもつ新たな役割が解明され,特に,従来のアサリ漁場管理で見落とされてきた“色に基づく”漁場管理という新たな視点が加えられると期待されます。
本研究により,貝類漁場整備や貝類資源保全に関する分野の技術開発への応用が期待できます。