マガキなどの貝類養殖において,有害付着生物の大量付着が養殖種の斃死の一因になっています。チギレイソギンチャクは有害付着生物の幼生などの動物プランクトンを摂食するので,この習性を利用してイソギンチャクを用いた新しい付着生物対策法を考案しました。本対策法は,養殖二枚貝の貝殻表面にイソギンチャクを先行付着・増殖させることによって,養殖種を付着生物から保護します。二枚貝の養殖において,有害付着生物問題に対して種々の対策が講じられていますが,本対策技術は,既存の対策が使えない海域には有望な対策です。
We devised a method to mitigate biofouling in oyster culture using sea anemones as a fouling control agent. By mass culturing sea anemones and attaching them on the surface of oyster shells, we were able to mitigate attachment of barnacles on cultured oysters. We have also confirmed that the sea anemones had no adverse effect on the survival and growth of cultured oysters. This antifouling measure can also find application on other cultured bivalves, in environments where current available measures are not applicable.
本付着防止対策は,有害付着動物の幼生を捕食するイソギンチャクを養殖二枚貝に先行付着させることによって,養殖種を保護する技術です。実際に養殖種をイソギンチャクで覆い,フジツボに対する付着防止効果を確認した結果,先行付着したイソギンチャクと付着したフジツボ個体数の間に逆相関がみられ,本種の付着軽減効果が確認できました(図1、2)。イソギンチャクは,養殖種に対して無害であることが確認されています。現在は,長崎県と連携して諫早湾で有害付着生物に対する対策としての有効性を検証しています。本種の安定的なサプライを実現するために,大量培養の技術開発も進めています。
本研究により,水産分野,特に二枚貝養殖において環境にやさしい付着防止対策としての応用が期待されます。