我々は独自の研究から,骨代謝に関与する破骨細胞の分化過程で増大する遺伝子Rab44を発見しました。Rab44をノックダウンした破骨細胞は活性化・巨大化し,逆にRab44を過剰発現した細胞では活性化が抑制されました。つまり,Rab44は破骨細胞分化を負の制御を行うことが分かりました。その後,Rab44はマスト細胞で最も多く発現していることを見出しました。マスト細胞はアレルギーを惹起する細胞として知られています。そこでRab44欠損マウスを作製すると,同マウスは野生型マウスに比べ,アナフィラキシー症状が半分程度減少を示しました。したがって,Rab44は破骨細胞だけでなく,マスト細胞の脱顆粒とアナフィラキシーを調節することが明らかとなりました。
We discovered a novel gene, Rab44, that was increased during the differentiation of bone-degrading osteoclasts in our research work. In osteoclasts, knock down of Rab44 promoted osteoclast differentiation and activation, whereas overexpression of Rab44 suppressed the differentiation. Thus, Rab44 is found to negatively regulate osteoclast differentiation. Recently, we found that Rab44 is most highly expressed in mast cells. Mast cells are known to cause anaphylaxis and allergy responses. When Rab44-deficient mouse was generated, the mice showed a half the reduction in anaphylactic symptoms compared to the wild-type mice. Therefore, Rab44 likely to regulate degranulation and anaphylaxis of mast cells as well as osteoclasts.
最大の特色として,Rab44は我々が同定した新規遺伝子であることが挙げられます。我々は骨代謝に関与する破骨細胞におけるリソソーム機能を 制御する遺伝子を同定するため,独自のDNAマイクロアレー解析から,これまで報告されていないRab44遺伝子が同定できました。
研究成果として,Rab44をノックダウンした破骨細胞は活性化・巨大化し,逆にRab44を過剰発現した細胞では活性化が抑制されました。したがって,Rab44は破骨細胞分化を負の制御を行うことが分かりました。
一方,マスト細胞アナフィラキシーとアレルギーを惹起する細胞であり,自然免疫や獲得免疫に関与する免疫応答を調節します。Rab44欠損マウスを作製すると,同マウスは野生型マウスに比べ,アナフィラキシー症状が半分程度減少を示しました。同様にRab44ノックアウトマウス由来の骨髄マスト細胞は,FcεRIを介したヒスタミンとβ-ヘキソサミニダーゼ分泌が野生型細胞に比べて有意に減少していました。これらの結果から,Rab44はマスト細胞の脱顆粒とマウスのIgEを介したアナフィラキシーを調節することが明らかとなりました。
今後の展望として,Rab44の詳細な分子メカニズムの解明と同マウスを用いた病態解析などを行う予定です。
本研究により,Rab44を標的としたヒトへの抗アレルギー薬あるいは骨代謝に関する治療や診断への応用が期待できます。