海産無脊椎動物においては,免疫機能において重要な役割を有するレクチン(糖結合性タンパク質)の研究報告例は少なく,その詳細についてはこれまでまだあまりよくわかっていませんでした。私は新規海産無脊椎動物由来レクチンの探索,およびその構造・機能解析を行っています。牡蠣からマンノース特異性レクチンCGL1,イソギンチャクからガラクトース特異性レクチンAJLec,2枚貝からGlcNAc特異性レクチンSPL-1/2等を発見しました。これらについてその糖特異性および結晶構造を決定し,それらのユニークな糖鎖認識機構の詳細を明らかにしました。
Many of lectins from marine invertebrates are uncertain in terms of its structures and recognition mechanisms for carbohydrates. I am trying to isolate nobel lectins from marine invertebrates for identification, characterization, and X-ray crystallographic analysis. Currently, I found mennose-specific lectin CGL1 from Crassostrea gigas (Pacific Oyster), galactose-specific lectin AJLec from Anthopleura japonica (Sea Anemone), GlcNAc-specific lectin SPL-1/2 from Saxidomus purpuratus (bivalve). I revealed its structures and recognition mechains for specific carbohydrates.
レクチン(糖結合性タンパク質)は,自然免疫機構において侵入微生物やウイルス等の認識に関わっていると考えられる,非常に重要なタンパク質です。無脊椎生物由来レクチンによる糖鎖認識の機構は非常にユニークなものが多く,本研究で明らかにしたCGL1,AJLec,およびSPL-1/2はいずれも,既知のレクチンとは大きく異なる糖特異性を有していました。
昨今の新型コロナウイルス問題も含め、今後も発生し得るであろう新型の病原菌やウイルスに対する対策を考える上で、他の生物において機能している免疫機構を理解し、ヒト医療へ応用利用する事の重要性は今後さらに高まって行くと思われます。
私の発見したこれらレクチンを用いて特定糖鎖構造の検出、特定の病原性微生物・ウイルスの検出、等が可能です。また、レクチンの抗菌抗ウイルス活性を利用した感染予防、感染の治療等に応用できる可能性があります。
レクチンマイクロアレイ用途として,また特定の糖鎖を特異的に検出する研究用試薬として応用が期待できます。特定の糖鎖構造を有する微生物およびウイルスの特異的な検出への応用が期待できます。
特定の微生物・ウイルスへの結合活性を利用して,抗菌・抗ウイルス素材の開発に応用が期待できます。