スマートフォン,液晶ディスプレイ,スマートウィンドウにも用いられる透明ITOガラス(酸化インジウム錫の薄膜をコートしたガラス)の表面は,従来の市販品では少なくとも10 nmレベルで凸凹が全面にありました。しかし,今や1 nm前後の製品も広く使えるようになっています。しかし,その表面に酸化還元活性を高密度で組み込んだ有機膜を高配向で被覆する技術はいまだ確立しているとは言えません。我々は,ITO上での,その場縮合反応を利用し,水素結合ネットワークで支えられるビオロゲン単分子膜製作に成功し,その手法を更に磨いています。さらには,金の結晶面にビオロゲン単分子膜を合成し,ナノレベルでの膜構造や共存アニオンの効果を精査しています。
The surface of optically transparent ITO glass (glass coated with a thin film of indium tin oxide), which is used for smartphones, liquid crystal displays, and smart windows, had severe roughness at the level of at least 10 nm in previously commercially-available products. However, products of less than 1 nm roughness are now obtainable on commercial basis. However, the technology for coating the ITO surfaces with redox-active organic films with highly ordered orientation has not been established.
We have succeeded in producing a viologen monolayer supported by a hydrogen bond network by utilizing the in situ condensation reaction on ITO. We are currently on the way of further improving its method. In addition, we synthesize viologen monolayers on gold surfaces and investigating the nanostructure and the effect of coexisting anions on the redox activity.
Overall, we pave the way to the development of a robust platform functioning as an electron mediation layer, which is applicable to the DNA sensing and poly-target sensing.
これまでに,シロキサンベースでアシド結合連結を持った膜を,被覆量を制御して合成できることを見出しました。被覆量は,サブ単分子膜から,三次元マトリックス層を形成する状態まで,広く制御して膜を用意できます。
左下図は,ITO表面の機能性有機単分子膜の断面模式図です。レドックス活性基が存在する領域の誘電率が,水中より相当低い状態に設定可能なことが見て取れます。これは,三酸化還元に伴うアニオンの結合や出入りの制御に欠かせないミクロ化学環境設定です。誘電率が低い状態で,ビオロゲン酸化体は,やわらかいアニオンと強く結合します。これを利用して,レドックス電位を制御したり,アニオンセンシングをしたり,二重膜を構造の土台として用いたりすることができます。
下段中央の図は,合成にした分子膜構造の一例です。この構造を調べるため,プローブ光に平面偏光をかけてITOを透過させ,しかも入射角を変える測定(右下図)も進めており,高い配向性を示唆するデータが既に得られています。電位変調を与えた分光測定では,還元したビオロゲンが相当程度、ダイマー化する様子も確認できました。
臨床DNA分析,血中薬剤などの電気化学分析に革新をもたらせる基礎研究です。分子シャトル能を高度化した超平坦高配向性高密度単分子膜の作製技術は,臨床DNA分析や血中薬剤やホルモンの電気化学的定性・定量用の電極系構築に革新をもたらすことが期待されます。
光透過性の電気化学関係デバイスやセンサーを扱う企業・メーカーとの共同研究提案を歓迎します。また,環境DNA分析などの新しい高速高精度多様種センシングについて,環境科学や医工連携による臨床分析への応用を共同で探る共同研究も視野に入れたいと考えています。