私たちは，2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故によって避難をした福島川内村や富岡町，さらには大熊町の復興に資する研究をそれぞれの自治体と連携して進めています。具体的には，環境放射能モニタリングや食品中の放射性物質のモニタリングを通じた住民の被ばく線量評価や，放射線被ばくリスク認知に関連する因子の同定を通じた効果的なリスクコミュニケーション戦略の策定，などです。これらの取り組みを通じて，「住民，自治体と専門家が一体となって取り組む原子力災害からの復興モデル」の構築に努めています。
We promote the research projects which are available for the recovery of local community around TEPCO Fukushima Daiichi Nuclear Power Station (FDNPS), such as Kawauchi villegam Tomioka town and Ohkuma town. We evaluate the exposure doses of residents through the monitoring of environmental radioactivties and food monitoring. Also, we studied about the risk perception of the residents on the radiation and health effects, to establish the effective strategies of risk communication. We aim for the establishment of recovery model from the nuclear disaster through the cooperaation of residents, local authorities and specialists.
福島第一原子力発電所事故によって環境中に放出された放射性物質のうち，放射性セシウムという物質はキノコに集積することがわかっています。一方で私たちが復興支援を行っている福島県川内村は，以前より里山文化が根付いており，キノコを採取して食することは村の文化として育まれてきました。そこで私たちは，住民の皆さんと協力して，2013年から「キノコマッププロジェクト」を開始しています。これは，住民の方にキノコを採取したうえでその種類，採取した場所を記載していただき，それらキノコ中の放射性セシウム濃度を私たちが測定し，結果を地図上に示すことで，キノコの採取場所，種類と放射性セシウム濃度が一目でわかるよう，可視化したものです。得られた結果は毎年住民に報告し，今後どのようにこのプロジェクトを進めていくか，議論を行っています。このような取り組みは高く評価され，世界トップレベルの科学雑誌である「サイエンス」誌上にも紹介されています。
私たちの取り組みを通じて，原子力災害からの地域の復興という世界でも経験のない事象について，科学的な知見を積み重ねることが期待されます。また，原子力災害のみならず広く災害からの復興に必要な住民，行政と専門家による復興モデルが構築されることも期待されます。