東日本大震災では,大量の災害廃棄物と津波堆積物が発生し,再利用できる素材を回収した後には分別土と名付けられた土砂が残留しました。この分別土は土木資材として有効利用する方針ですが,腐敗する有機炭素が混入していることが利用を妨げています。本研究では,土砂に混入している木くず等有機炭素の簡便な削減方法を開発します。削減の方法としては原位置において生物分解させることを採用し,木材腐朽菌の働きによって木くず等有機炭素の削減を目指します。
Large amount of disaster waste and sediment derived from tsunami was generated by The Great East Japan Earthquake 2011. Recyclable materials were collected and sandy residue, named sorted soil remained. Although the sorted soil is intended to be utilized as a ground material, contaminated organic carbon which would decompose prevents the utilization. In this study, I develop a simple reduction method of organic carbon such as wood particle contaminated in soil with wood rotting fungi.
特色:
木材腐朽菌による土砂中の木くずの分解は,湿式選別と比較して排水が出ないこと,焼却処理と比較してエネルギー使用量が少ないことが特長として挙げられます。また,土砂の堆積現場において,原位置で処理できることも特長です。
研究成果:
木材腐朽菌が繁殖するのに最適な条件は培養温度30℃,含水率60%であり,100日間で木くず重量の40 w%程度が減少しました。また,酸素消費速度を測定し,分解の過程において土砂中が酸欠を起こさないか確認しました。初期木くず含有量1,2,8および10 w%のとき,酸素進入深さは1.2,0.81,0.39および0.35 mとなりました。土砂中に木くずが8 %以上含まれている場合,木質腐朽菌によって消費される酸素を確保するためには,通気パイプなどを設置する必要があります。酸素進入深さが0.3 mなら,パイプ1本で上下0.3 mに酸素が供給されるとして,0.3×2 = 0.6 mおきにパイプを設置するのはどうでしょう。
今後の展望:
木くずだけを用いて,また,木材腐朽菌と木くずを混合した実験を行いました。実際の現場では,木くずを含んだ土砂の堆積物に対して,その表面から木材腐朽菌を散布することになるでしょう。したがって,木くずを含んだ土砂の上に木材腐朽菌をのせて水を撒く,といった作業によっても,木くず分解の効果が深くまで及ぶかどうか確かめねばなりません。
巨大地震のみならず,豪雨による土砂崩れによっても立木・家屋由来の木くずが混入した土砂が発生するケースがあります。この場合においても,本研究成果によって木くずを原位置で分解できれば,迅速な土砂の有効利用が可能となります。