Journal for Peace and Nuclear Disarmament(J-PAND)は,長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)が編集し,英国のTaylor & Francis社から刊行されている国際学術誌です。RECNAセンター長の吉田文彦が編集長をつとめています。J-PANDの主な任務は,理論・実践の両面に関する研究を基盤としながら,核軍縮と平和の促進に寄与することです。核軍縮を後押しする政策やその他の考え方に関して,たとえば次のようなテーマに関連した論文を掲載しています。(1)誠実な軍縮交渉を義務付けている核不拡散条約(NPT)第6条の迅速な履行,(2)核兵器禁止条約(TPNW)に体現された規範を広げること,(3)核兵器の廃絶へと進むため,あらたな核のグローバル・ガバナンス体制を創出すること――です。
The main mission of the Journal for Peace and Nuclear Disarmament(J-PAND), edited by Research Center for Nuclear Weapons Abolition, Nagasaki University(RECNA)and published by the Taylor & Francis Group in the U.K., is to contribute to furthering nuclear disarmament and peace based on both theoretical and practical studies. The journal will serve as a vehicle to put forward proposals for policies and other ideas that could contribute to nuclear disarmament, including ways of:(1)rapidly implementing Article VI of the Nuclear Non-Proliferation Treaty, (2)promoting the norms embodied in the Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons to the fullest extent, and(3)creating a new global governance regime for nuclear activities to facilitate the elimination of nuclear weapons.
核軍縮に関する国際学術誌は欧米の研究機関の編集によるものが大半で,アジアでは極めて少ないのが現状です。伝統あるTaylor & Francis社から刊行しているものとしては,この分野ではアジアでJ-PANDが唯一です。世界で唯一,戦争被爆した経験を持つのが長崎大学です。そうした歴史的背景も踏まえて,(1) 核抑止の効用と限界,費用対効果,リスク対便益を分析し,核抑止への過大かつ安易な依存のマイナス面を直視すること,(2)核廃絶に向けた人道的アプローチを具体化する政策ツールの考察,開発,活用に寄与していくこと,(3)多様化する安全保障観のもとで,非核兵器地帯を構築し,核兵器禁止条約の重要性を強調する南半球諸国の核兵器に関する論考を世界に発信すること,を重視しています。もちろん,異なる視点からの論考も掲載しています。創刊は2017年で,一年に1巻(各巻に2号)のペースで刊行しています。オンラインのフリーアクセス方式をとっていることから,世界各地から数多くの方々が閲覧しています。掲載論文,投稿論文とも欧米からだけでなく,アジア,南米,大洋州と多様化しており,今後とも国際的な研究水準の向上,多角的な視点の論考の拡大に向けて貢献していきます。
2019年の閲覧数は7万件近くあり,2018年の約2.6倍となりました。同年の四半期ごとの閲覧数は右肩上がりが継続し,2019年第4四半期は前年同期比で約2.5倍の伸びでした。掲載論文の中には,閲覧数が10000件近いものが出てきています。発効から50年のNPTが直面する課題,近く発効見込みのTPNWの実行上の課題などの論文特集を予定しており,今後の政策論議に新たな知見を加え,貢献していきます。