研究テーマ ｜ Research theme
障害高齢者の"well-being"実現に向けた拘縮に対する新規リハビリテーション戦略の開発
Development of new rehabilitation strategies against contracture to realize "well-being" for the disabled elderlies
研究者 ｜ Researcher
研究概要 ｜ Research summary
超高齢社会の到来によって重篤な関節の運動制限（拘縮）を抱えた障害高齢者が増加の一途を辿っており，その健康寿命の延伸に向けた拘縮対策の見直しが迫られています。なぜなら，障害高齢者に頻発している重篤な拘縮は適切な看護・介護ケアの実践を妨げ，QOLを低下させるとともに，最終的な看取りではご遺体の美しい姿にも直結するからです。しかし，他動関節運動などの身体局所のみに介入を行う旧来の拘縮対策では限界があり，新たな拘縮対策の開発が喫緊の課題となっています。そこで，本研究では動物実験に基づく基礎研究を臨床研究につなげるトランスレーショナルリサーチを展開し，障害高齢者の “Well-being”の実現に向けた拘縮対策としての新たなリハビリテーション戦略の開発を目指しています。
Coming the advent of the super-aged society, the number of disabled elderlies with severe joint movement restriction (contracture) is increasing, and it is necessary to review the rehabilitation strategies against contracture measures for extending the healthy life expectancy. Severe contracture prevents proper nursing/care and reduces QOL, this dysfunction closely relates to the beautiful appearance of the corpse at the caregiving term. However, the conventional local intervention with passive ROM-ex etc. have limitations as the rehabilitation strategies against contractures, and the development of new rehabilitation strategies against contractures is an urgent problem. Therefore, our laboratory is progressing translational research that connects animal experiments to clinical research, we are promoting to develop a new rehabilitation strategy against contracture toward the realization of "Well-being" for the disabled elderlies.
特色・研究成果・今後の展望
これまで本研究室は拘縮の責任病巣の中心である骨格筋に着目し，基礎研究によって骨格筋の低酸素状態が拘縮の重篤化に影響することを明らかにしてきました（Muscle Nerve 52, 2015）。また，この結果を受け，拘縮対策には骨格筋の血流増加を促し，低酸素状態を緩和することが不可欠と考え，その効果が期待できる骨格筋電気刺激法（EMS）の有効性を基礎研究を通じて明らかにしてきました（Connect Tissue Res 58, 2017）（図1-A）。ただ，重篤な拘縮を抱えた障害高齢者を対象に行った臨床研究では， EMSのみの介入ではその効果に限界があることが判明しました（Health 11, 2019）（図1-B）。そこで，その要因を探る目的で障害高齢者の身体活動量と拘縮重症度の関連性を検討した結果，身体活動量が少ないほど重篤な拘縮が発生していることが明らかになりました（図1-C）。
以上のような研究成果を受け，本研究室では今後，拘縮の病態そのものに効果があり，身体活動量を向上させる拘縮対策の新規リハビリテーション戦略の開発を目指しています。
社会実装への展望
本研究の成果は，障害高齢者の健康寿命を延伸し，豊かな「人生100年時代」の実現に貢献できると確信しており，拘縮対策に資する新規の評価・治療機器・技術の開発につながる可能性が期待できます。