研究テーマ | Research theme

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の早期発見と重症化予防に関する新たな介入戦略

New strategies for early detection and prevention of the disease progression in chronic obstructive pulmonary disease

研究者 | Researcher

神津 玲

Kozu Ryo
生命医科学域
医歯薬学総合研究科理学療法学分野
教 授

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田中 貴子

Tanaka Takako
生命医科学域
医歯薬学総合研究科理学療法学分野
准教授

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研究概要 | Research summary

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は喫煙を主な原因とする慢性呼吸器疾患であり,世界的に患者数と死亡率の増加が予測され,医学的にも社会的に大きな問題となっています。しかし,COPDは初期症状に乏しく,一般市民にとって認知度が低いため,疾患が進行してから診断・治療される現状にあり,医療費高騰の原因にもなっています。COPDの治療と管理においては,いかに早期発見から診断,さらに呼吸リハビリテーションを含む治療へと確実に結びつけるかが重要な課題となっています。
こうした背景をふまえて本研究室では,COPDの早期発見から治療へと結びつけるシステムと,これらによって診断されたCOPD患者さんに対する呼吸リハビリテーションの提供方法の開発に取り組んでいます。

Chronic obstructive pulmonary disease (COPD) is a common respiratory condition mainly caused by tobacco smoking. It causes significant morbidity and mortality, and that leads to significant burden, both medically and socially in worldwide.
However, since COPD has few initial symptoms and is poorly recognized among the general population, many patients are not diagnosed until the disease is advanced. COPD posed a substantial burden in terms of total healthcare costs. Early detection, diagnosis and management including pulmonary rehabilitation are essential.
We are developing a system for early detection of COPD and refer to respiratory physician, and a providing starategies for pulmonary rehabilitation to COPD patients.


特色・研究成果・今後の展望

当研究室ではまず,COPDの早期発見と治療のシステムを確立するために,長崎県松浦市において市保健所,医師会ととともに「COPD対策プロジェクト」を設立し,問診とスパイロメトリーによる検診にてCOPD疑い者を専門医療機関へ紹介するとともに,呼吸リハビリテーションを含めた標準的治療へと結びつけるシステムを構築しました。10年間にわたって200名以上のCOPD患者さんを発見し,治療へと結びつけることができ,現在もフォローアップを続けています。これらの取り組みの有用性を検証した結果,COPD有病率(9.2%)が明らかとなり,その内45%の軽症患者さんを早期に発見できました。また,本システムでの治療継続率は74%と高く,COPDにかかわる医療費は,長崎県の他都市と比較して有意に低く,医療費の抑制を示すこともできました(Tanaka K, Intern Med 2018, Tawara Y, Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2015)。

上記の取り組みは長崎市においても開始していますが,呼吸リハビリテーションを提供できる施設が限られているため,本研究室でCOPD患者さんのための呼吸器教室「活き生きなが息教室」を立ち上げました。呼吸リハビリテーションを提供する新たな機会として,身体活動量,呼吸困難,健康関連QOLを指標としてその有用性を検討した結果,軽症例では1日平均歩数と健康関連QOLに有意な改善を認めましたが,中等・重症例では変化が得られないことが明らかとなり,今後の課題となっています。
このような患者さんに対しては現在,患者さんの自宅にいながら呼吸リハビリテーションを受けることができるオンラインシステムによる「呼吸テレリハビリテーション」の実施可能性と有効性を検証する研究に着手し,この課題の解決につなげるように努めています。


社会実装への展望

本研究の成果は,COPDの早期診断と治療の開始によって当該患者さんの活動性向上や健康寿命の延伸とともに,新たな呼吸リハビリテーションのプログラム・パッケージの開発応用に寄与し得ることが期待できます。