ヒト成熟肝細胞を低分子化合物によりリプログラミングした肝前駆細胞(Chemically-induced Liver Progenitor; CLiP)を作製するプロトコルを確立すると共に,ヒトCLiPが非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic Steatohepatitis; NASH)に起因する肝硬変治療に利用し得ることを明らかにします。本研究では,前臨床研究として,自己成熟肝細胞からCLiPを大量作製して肝硬変を治療する新規かつ独創的な治療技術を確立します。自己組織を用いるため免疫抑制剤も使用せず,効果の高い肝再生医療となる可能性があります。iPS 細胞等とは異なる自己リプログラミング肝幹細胞を用いた安全な再生医療として,発展性が大いに期待できます。本研究が達成されれば,安全な肝再生医療として学術面・社会面の双方に強いインパクトを与え得ることができます。その大きな特色は,自己肝組織から成熟肝細胞分離とCLiP大量作製・移植治療を実施するプロトコルを策定する事です。
This project is focusing on the therapeutic challenge using chemically induced progenitor (CLiP) for liver cirrhosis not indicated for liver transplantation.
CLiP is very unique progenitor cells induced by 3 small chemical molecules developed by Prof. Ochiya and Dr. Katsuda.
CLiPは抗線維化や抗炎症のみならず,自己肝細胞そのものを複製・代替し得ることから,自己細胞による障害肝置換が期待できます。すなわち,迅速な治療効果が得られると同時に,長期的な正常肝機能の維持と余命の延長が期待されます。iPS細胞等由来肝細胞/肝幹細胞と異なる点は,遺伝子操作しないことから予期せぬ腫瘍形成の危険性は限りなく低く,その上,成熟肝細胞への分化効率も高いために肝機能を補助する効果も期待できるため,安全かつ有効なNASH肝硬変治療として臨床応用可能性が高いです。
ヒト肝生検組織からのCLiP作製,移植によるNASH肝硬変の線維化改善効果を認めれば,ヒト臨床での患者からの肝生検から自己CLiP作製,さらに移植による自己肝再生効果を得ることができ,肝臓移植を受けられない患者の治療に新しい体系を加えることとなります。