研究テーマ | Research theme

アルツハイマー病などの認知症治療薬の探索

Drug discovery for Alzheimer's disease and dementia

研究者 | Researcher

松本 弦

Matsumoto Gen
生命医科学域
医学部組織解剖学
講 師

researchmap


研究概要 | Research summary

アルツハイマー病を含む認知症の多くは,神経細胞内に変性したタンパク質凝集体が蓄積する病態を示すことが共通した病理学的な特徴として知られています。神経細胞内での変性タンパク質の蓄積は加齢と密接な関係したタンパク質分解不全によると考えられているので,弱まったタンパク質分解機構を活性化させるための方法を探索し,神経細胞を変性タンパク質から守り,認知症の発症と進行を止める治療薬の開発を行っています。

Alzheimer's disease is the most common cause of dementia and known as a protein misfolding disease, caused by plaque accumulation of abnormally folded amyloid beta protein and tau protein. As the accumulation of misfolded protein is a consequesnce of deficiency of protein degradation systems, we looking for drugs that enhance degradation of aggregated proteins in neurons.


特色・研究成果・今後の展望

アルツハイマー病は細胞外のアミロイドβの蓄積による老人斑と線維化したタウタンパク質の細胞内蓄積による神経原線維変化を伴う進行性の疾患で,根治治療法は未だ存在していません。アルツハイマー病の発症時にはすでに多くの神経細胞が失われているので,疾患発症の予防と進行の抑制には神経細胞死を防ぐことが最も重要であると考えられます。神経細胞死は変性したタウタンパク質の線維化の進行と相関があることが知られているので,変性したタウタンパク質の線維化を抑制することが神経細胞死を防ぐことにつながると考えられます。このような凝集性タンパク質は細胞内ではアグリファジーと呼ばれるタンパク質凝集体の選択的オートファジーにより分解されることが知られているので,薬剤によりアグリファジーを人為的に促進することで,変性したタウタウタンパク質を分解し神経細胞死を防ぐことができると考えています。我々はすでにいくつかのアグリファジー促進化合物を発見しており,培養細胞内でタウの凝集体を減らすことに成功しています。これらのアグリファジー促進剤を認知症治療薬にするための動物実験もおこなっており,有効性が確認できれば治療候補薬としての創薬研究開発につなげていきます。また,アグリファジー促進剤はアルツハイマー病だけでなくパーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患に共通したタンパク質凝集体の分解を促進できると考えられるため,認知症以外の疾患への応用も視野にいれて研究を行っています。


社会実装への展望

本研究により,認知症の発症前診断にもとづくアルツハイマー病などの認知症予防治療薬の開発への応用が期待できます。認知症以外の神経変性疾患への応用も可能です。