個別化がん免疫療法の開発は，がん免疫研究の領域で近年大きな課題の一つと考えられています。特に個別のがんの遺伝子変異由来抗原であるネオアンチゲンを標的とした有効ながん免疫療法の開発は喫緊の課題です。我々はAMED次世代がん医療創生研究事業として，がん患者のネオアンチゲンを同定すると共に腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を解析し，ネオアンチゲンを認識するTIL由来のTCR遺伝子を取得し，ネオアンチゲンを標的とした極めて患者個別性の高いTCR遺伝子導入T細胞輸注療法の開発を目指しています。
Development of personalized cancer immunotherapy is an attractive challenge in the recent cancer immunology research. It is important to develop cancer immunotherapy targeting neoantigen that derives from the personalized genetic alterations in individual cancer. We have been conducting a research project supported by AMED Project for Cancer Research and Therapeutic Evolution (P-CREATE) that aims to define neoantigen and isolate tumor infiltrating lymphocytes (TIL)-derived TCR that recognize cognate neoantigen in individual cancer patients to establish TCR-T therapy targeting neoantigen as a novel and effective personalized cancer immunotherapy.
次世代型がん治療の重要なキーワードとして個別化医療が挙げられます。がん免疫療法の領域でも個別化医療開発は大変重要な課題であり，特に個別のがんの遺伝子変異由来抗原であるネオアンチゲンを標的とした有効ながん免疫療法の開発は喫緊の課題です。免疫チェックポイント阻害剤の有効性が遺伝子変異量(tumor mutation burden)に相関する事が知られ，ネオアンチゲンを標的とした免疫応答が免疫チェックポイント阻害剤の効果を規定していると考えられるようになり，ネオアンチゲンを標的としたがん免疫療法の開発が大きく注目されています。我々は単一リンパ球のTCRを超短時間でクローニングする技術，東大医科研のスーパーコンピューターに装備した遺伝子変異由来抗原エピトープ予測プラグラム，TCR-T療法臨床開発の技術等を総合的に駆使し，本研究をAMED事業の多施設共同研究として実施しています。すでに大腸がん由来のネオアンチゲンを認識するTCRを同定し，当該のTCR遺伝子導入T細胞を作成する事に成功する等の成果が挙がっています。
個別がん免疫療法は近い将来に有効ながん免疫療法となることが期待されており，世界的にも競争が激しい最先端領域の研究です。本研究は，TCRクローニング法，コンピューターサイエンス，細胞免疫療法開発等の我が国のトップレベルの研究室が協力することにより，成功すれば多くのがん患者に新規で有効な治療法を届けることが出来る大変ニーズが高い研究です。