2001年に日本でも大きな社会問題となったいわゆる狂牛病(BSE)の原因病原体であるプリオンに関する基礎研究に加え,診断法開発,治療薬開発,不活化方法開発を行っています。BSE問題は国内では終息しましたが,ヒトのプリオン病は指定難病であり,いまだに治療法のない致死性の疾患です。2011年に開発に成功したリアルタイムQUIC法は,非常に感度特異度の高い新しい検査方法として現在世界中で使われています。また,治療薬候補を複数見つけ実用化にむけた研究を進めています。経産省の予算をいただいて行った内視鏡洗浄機開発プロジェクトでは,製品化に漕ぎ着け現在臨床現場での有効性検討がなされています。
Human prion diseases are categorized etiologically into three forms: sporadic, genetic, and infectious. Sporadic Creutzfeldt-Jakob disease (sCJD) is the most common type; it manifests as subacute progressive dementia, and no effective therapeutics for this disease is currently available. Our study foncus on developing a diagnostic method, treatment, and decontamination of prion. We have established real time quaking induced in vitro conversion (re-Quic)method to detect very small amount of prion in celebrospinal fluid (CSF) of the patient. We also found several compounds that will be effective for human prion diseases.
ウイルスやプリオンの病態解明研究が主たる研究ですが,その成果を臨床現場で生かすことができる実用化研究にも積極的に取り組んでいます。プリオンは非常に取り扱いの難しい極めて厄介な病原体であり,研究にはBSL2,BSL3の実験室を要しますので,研究を行えるラボは国内でも限られています。少なからず発症して亡くなる患者さんが今もいらっしゃること,家族性の疾患も存在すること,動物のプリオンの問題もまた新たな局面を迎えていることなどから,今まで以上にしっかりと基礎研究,応用研究に取り組む必要があります。研究室では,プリオン意外にもJCウイルス,ロタウイルス等の研究も行っています。インフルエンザウイルス,コロナウイルスに関してはコンピュータを用いて治療薬候補を探索するin silico創薬を鹿児島大学,岐阜大学と共同で進めています。また最近では,ヒトパピローマウイルスによる子宮頸がんの他,ウイルス発癌の研究,腸内細菌とプリオン感染発症の関連性などの研究も始めています。生命科学の基礎的研究手法はウイルス学分野に限らず応用可能ですので,分野の壁を超えて様々の研究を企業と展開することもあります。
内視鏡洗浄機開発には多くの時間を要しましたが,その過程で技術を実用化する際の様々な困難を経験し,企業との連携の重要性を改めて学びました。診断法開発は実験はうまく行き技術としては広く有用性を認められていますが,キット化,汎用化,自動化,などのその後の開発はまだこれからの課題です。